噛みしめ・歯ぎしり
・「噛みしめ」や「歯ぎしり」について知っておきたいこと
「噛みしめ」や「歯ぎしり」と聞くと、すぐストレスを連想する人が多いようですが、「噛みしめ」や「歯ぎしり」は多かれ少なかれ誰でもしている一種のくせと考えて良いと思います。
ですから、特に問題を起こさない限り、放置しても構いません。
ただし次のような問題が起きた時、「噛みしめ」や「歯ぎしり」が原因のこともあると知っておきましょう。
1)歯への障害:歯の磨耗・歯の破折・歯がしみる・噛むと痛い等
2)歯周組織への障害:歯ぐきがさがる・歯周病(=歯槽膿漏)
3)顎関節への障害:顎関節痛・開口障害・カックン音
4)全身への障害:顔面痛・頭痛・肩凝り・腰痛
5)その他:舌痛症・むちうち症状・倦怠感
これらの症状が、全て「噛みしめ」や「歯ぎしり」からくるとは限りません。が、これらの症状の大きな要因にはなりますので、対処法を知り、悪い癖はなくしておいた方が良いでしょう。
この癖は、眠っている時や何かに夢中になっている時に起こるため、気づきにくく、治りにくいです。マウスピースを入れて治す方法もあります。が、道具に頼るといつまでもそれを入れていなければなりませんし、やめればまた症状が戻ってしまいます。
ですから、まずあなた自身が「噛みしめ」や「歯ぎしり」に気づき、あなた自身が治すために行動するしかないのです。あなたが本気になって治す気になれば、意外と簡単に治る方法もあります。
では、その方法をお教えします。
・対処法1:噛みしめていない状態を覚える
1)
まず、思い切り歯を噛みしめます。そして1~2秒後に、
フッと顎の力を一度に全部抜いてみて下さい。
上下の歯が僅かに離れるでしょう。
その位置が、理想的なリラックスした位置です。
もう一度やってみましょう。
2)
次に、思い切り大きな口を開いてから、
今度はガクンと脱力してみて下さい。
おそらく、1の時とほぼ同じ位置に顎が閉じるでしょう。
(顎の関節が痛くて開けられない人は、
無理せず開けられる所までで大丈夫です。)
この時、呼吸を合わせてやってみると良いでしょう。
つまり、力を入れるときに息を吸って、いったん
1~2秒止めてから、脱力する時に一気に吐くのです。
これももう一度やってみましょう。
昼間も、寝ている時もいつもこの状態になっていればいいのです。
実は、一流のベテランスポーツ選手も、よくこの状態を心がけています。
たとえばスケートのオリンピック金メダリストの清水宏保選手も、ロケットダッシュの秘訣は「スタート前の顎の脱力だ」と断言していました。
・対処法2:日中の噛みしめに気づく
仕事等に夢中になっている時、ふと気がつくとしっかり噛みしめていたり、舌を吸いつけていたりしていることが誰にでもあります。
あなたは、気づいたことがありますか?
YESの場合
噛みしめに気づいた時は、まず肩を上下させ、首から上の力を思い切り抜きます。
そして対処法1でやったように脱力して、上下の歯を離してから、また仕事に向かって下さい。
NOの場合
気づいたことがない人も、きっとしている時があると思います。
気をつけるようにしてみて下さい。
・対処法3:問題は「夜眠っている時」
眠っている時のことなど、コントロールできないと思っている人が多いと思います。しかし、「明日の朝4時に起きなければいけない」と思って寝ると、不思議とその時刻に目が覚めるという経験をしたことはありませんか。眠っている間も、体内時計と「起きなければいけない」という意識が共同作業をして、正確にその時間に目覚める、ということが私たちにはできるのです。
そんな難しいことができるのですから、上下の歯を合わせないようにリラックスして眠るということも、「その気」になりさえすれば意外と簡単にできるものです。うまく行えるかどうかは、あなたがどれだけ「その気」になるかにかかっているのです。
1)前準備
・枕を低めにしましょう。
後頭部の一番出っ張ったところより首の付け根近くに枕がくるようにします。そうすると頭が少し上を向くので、口が開きやすくなるからです。おもに仰向けに寝る人は、バスタオルをロール状に巻いて長い枕をつくるのも良いでしょう。横向きに寝る人は、背筋がまっすぐになる高さにしてください。
・布団に入ったら何も考えないようにします。
布団の中は眠るだけの所と決めてください。もし、どうしても考える事があればもう一度、布団から出て考えてください。あるいは、朝目覚めてから布団のなかで考える習慣をつけるとよい考えがでてきます。
2)本番
・布団に入ったら、仰向けになって少し手も足も開き気味にします。
↓
・対処法1でやったように、顎を脱力し歯を離した状態にします。
↓
・体全体もリラックスさせます。
まず、肩に思い切り力を入れて、1~2秒してから突然脱力してください。この時も呼吸を合わせてください。
同じように、胸、腹、太ももの脱力をして、最後に足の先からその日の全ての疲れとストレスを追い出してやるような気持ちで大きく息を吐き出しながら足の脱力をします。何回もやっていると、手のひらや足の裏あたりが少し温かくなった感じがしてきます。また、掛け布団が今までより重く感じたらうまく脱力できた証拠です。(足先を上に向けるのに苦労なほど掛け布団が重く感じたら、もう少し軽いものに替えましょう。)
↓
・最後にもう一度、顎の力が抜けていることと、上下の歯が離れていることを確かめて眠りに入ります。このまま一晩中眠れると、一番良いのです。
3)自己暗示
呼吸に意識を傾け、吐く時に脱力するのを繰り返しながら、手足やお腹が温かくなってくるのを感じて下さい。
また、吐く時に、自分がリラックスできる言葉を唱えてみましょう。たとえば「リラックス、リラックス」「いい気分、いい気分」「楽だ、楽だ」等、なんでもよいです。また「噛んではいけないぞ」「歯を合わせない」「開いて寝る」等も言い聞かせます。
そして、「翌朝に今ある全ての症状が無くなってすっきり爽やかに目覚めるあなたの姿」をイメージしながら眠りに入ってください。この自己暗示ができれば、症状のほとんどは劇的に改善します
・3種類のマウスピース
「噛みしめ」や「歯ぎしり」の自覚がないのに関連する症状があったり、自己暗示がうまくできない場合は、マウスピース(オクルーザルスプリント)を当院にてお作りします。
マウスピースには3種類あります。いずれも全部の上の歯を覆うような形をしています。ここまですれば症状もまず改善することになりますので、ご安心下さい。
1)診断用
「噛みしめ」や「歯ぎしり」をしているか診断するときに使ってもらいます。下の全部の歯と咬むようになっています。マウスピースには黒いマジックインクが塗ってあります。インクやマウスピースの削れ具合を見て診断します。最低2週間使ってもらいます。
2)治療用
「噛みしめ」や、「歯ぎしり」をしないようにするために使ってもらいます。下の前歯でしか咬まないようになっています。また、歯ぎしりできにくいように前に壁がついています。この壁は喉の乾きの防止にもなります。これを使うと症状は劇的によくなります。
これを入れていると、夢が多くなったり睡眠が浅いように感じますが、次第に慣れてきます。また、顎の関節が疲れたり下の前歯が浮いたりする時は噛みしめている証拠です。自己暗示を強化してください。
このマウスピースは治療期間の数ケ月のみしか使ってはいけません。長期間使っていると咬んでいない奥歯が伸びてかみ合わせが狂ってしまうことがあります。
3)メンテナンス用
長期間使う必要があるときは、治療用のマウスピースを全部の歯が咬むように改良してメンテナンス用として使ってもらいます。
以上です。
噛みしめや歯ぎしりによって、歯周病が引き起こされたり歯並びが悪くなったりすることが増えてきています。
また、冒頭でもご紹介しましたが、体の不調の原因(頭痛、肩こり、腰痛)にもなります。その他、歯並びが悪くなってしっかり噛めなくなると、肥満にもつながることが指摘されています。しっかり噛むことができないと、満腹中枢が刺激されないからです。
「たかが噛み合わせ」とバカにできないほど、想像以上に様々な問題の要因となってしまいますので、早めにご相談されることをおすすめいたします。